
50年後より、まず10年先 ー 立ち位置と稼ぎをイメージする生き方
未来を考える「時間軸」を修正する
私が若い皆さんにキャリアについて伝えることがあるとすれば、まず「遠すぎる未来」にとらわれすぎるのはやめよう、ということです。
よく「あなたの50年後の目標は何ですか」といった質問を耳にしますが、50年先、あるいはそれ以上に及ぶ長期的な未来を明確にイメージするのは至難の業です。私自身、正直いつ死ぬかはわからないと考えていますし、現在の情報や技術の変化の速さを考えれば、50年後に具体的な職種や業界がどうなっているか予測するのは不可能です。
だからこそ、私が皆さんにアドバイスしたいのは、時間軸をぐっと引き寄せ、「まず10年先くらいのイメージを持った方がいい」ということです。
50年先の内の10年目とは考えず、まずは最初の10年先だけを考える。その10年を走り切ることに集中する。そして、7年、8年くらい経ってから、次の10年先を具体的にイメージすればいいのです。
この考え方は、私自身の経験に基づいています。私は学生時代に「この世の中に自分の名前が残せることをやりたい」という大きな目標を抱き、そのための通過点として「30歳で独立」という具体的な目標を立てました。そして、その達成を「10年未満(最短)でできるために日々考えながら行動するようにしました」。
この方法が有効だったのは、10年という期間が、人間が大きな変化を遂げるのに十分な時間でありながら、具体的にイメージし、計画を立てることができる現実的な期間だからです。5年では短すぎるし、20年では具体的なイメージを持つことが難しくなります。10年というのは、野心的でありながら現実的という、ちょうどいいバランスなのです。
では、その「10年先」をイメージする際、何を具体的に設定すべきでしょうか。それが、単なる職種や会社名ではなく、自分の「立ち位置」と「稼ぎ」なのです。
第一章:「立ち位置」をイメージすることの重要性
職種ではなく、役割を考える
キャリアを考えるとき、多くの人が「有名企業に入ること」「特定の職種に就くこと」といった具体的な形から入りがちです。しかし、私から見れば、それは本質ではありません。
私が皆さんに伝えたいのは、「具体的なものより自分の立ち位置をイメージすることが大事」だということです。
私が若い頃、漠然と「この世の中に自分の名前が残せることをやりたい」という大きな目標を持っていました。どの仕事に就きたいかではなく、「どのようにしたら自分の軌跡を残せるか」が重要でした。
この「自分の軌跡」を残すために、10年後、自分はどのような役割を果たしているのか、どのような責任を負っているのか、どのような影響力を周囲に与えているのか、という「立ち位置」をイメージすることが重要になります。
例えば、「マーケティング部長」という肩書きよりも、「自社の商品やサービスを通じて、お客様に感動を提供できる立場にいる」という立ち位置の方が、本質的です。なぜなら、組織の形は変わっても、あなたが果たすべき役割や影響力の本質は変わらないからです。
「進化」を測るための基準
私の人生設計は、年齢でいうと30歳、40歳、50歳の時に「進化できているか」が大事であるという考えに基づいています。この「進化」とは、単に年をとることではなく、経験や能力が積み重なり、より高いレベルに到達している状態を指します。
10年先の「立ち位置」を明確にイメージすることは、その「進化」が達成できているかどうかを測るための基準となります。もし10年後に、誰かの下で与えられた業務をこなしているだけの自分をイメージするなら、その目標は「進化」としては不十分かもしれません。
自分が組織の中でどのようなポジションで、どのような専門性を発揮しているのか。同業種・異業種の人たちの中で、自分はどのように見られているのか。この「立ち位置」のイメージこそが、日々、自分が何を学ぶべきか、どの分野に挑戦すべきかを決定づける羅針盤となるのです。
私自身の経験を振り返っても、最初にハウスメーカーに入社した際、3年という期限で習得できることはすべてものにしたいと考え、積極的に動きました。しかし、入社2年目になる前に新しい部署のチーフ的ポジションが与えられそうになった際、私は経験を重視し転職時期を早めた結果、1年で転職しました。
なぜなら、そのポジションに留まることが、私の10年後の「立ち位置」に最も効率的に到達する道ではないと判断したからです。このように、明確な立ち位置のイメージがあれば、目の前の選択肢を冷静に評価できるようになります。
ビジョンと役割の一致
仕事に就くための「理由はいらない」と私は考えています。ただし、「ビジョンは必要」です。
自分のビジョン(例えば、誰かに感動を提供したい、社会に新しい空間を創りたい)と、10年後の「立ち位置」が一致していることが重要です。その立ち位置に到達するために、現在の自分が最も経験を積むべき分野はどこか、どの出逢いが必然的に必要か、が見えてくるはずです。
私の企業理念は「未来へ向かった軌跡に感動の道を提供します。」です。この理念は、私のビジョンそのものであり、そのビジョンを実現するための「立ち位置」を常に意識してきました。皆さんも、自分のビジョンと立ち位置を一致させることで、迷いのないキャリア選択ができるようになります。
第二章:現実的な目標としての「稼ぎ」とプロの証明
金銭的評価は客観的な証明
10年後のイメージで「立ち位置」と並んで重要になるのが、「これくらい稼いでいる」という具体的なイメージです。これを通過点として設定することは、精神論ではなく、プロフェッショナルとしての自己評価と責任を測るための現実的な尺度だからです。
私は、仕事をする上で「感謝されるのと金銭で評価されることが必須です。どちらも欠けてはいけない」と明確に考えています。
もし皆さんが10年後、誰にも負けない専門性を持っていると自負するなら、その能力は正当な金銭的評価として返ってくる必要があります。金銭的な評価は、社会が皆さんのスキルやサービスに対してどれだけの価値を認めているかという、客観的な証明なのです。
現代社会において、SNSでの「いいね」や口コミでの評価など、様々な評価指標が存在します。しかし、最も厳密で客観的な評価は、誰かがその価値に対して実際にお金を支払うという行為です。金銭は、感情や主観に左右されない、市場原理に基づいた冷徹な評価基準です。
プロフェッショナルの要件
「依頼者の要望通りは誰でもできる」。プロとして、それ以上の付加価値をつけて喜ばれ(感謝)、その結果として高い金銭的評価を得ている状態、それが10年後に目指すべきプロフェッショナルの姿です。
私は「但しプロであるため責任をもって魅了することは必要です」と考えています。プロフェッショナルとは、自己のスキルと時間を提供し、それに対してクライアントや社会から信頼と責任を託される存在です。その責任の重さ、提供するサービスの質、そして結果に対する保証は、曖昧な「やりがい」や「感謝」だけでは担保できません。
目標とする「稼ぎ」を通過点として設定することは、皆さんが無償の努力や自己満足で終わるのではなく、市場価値の高い「武器」を身につけていることを意味します。この「稼ぎ」をイメージすることで、学ぶべきスキルや選ぶべき環境の厳選度が高まり、真に競争力のあるプロへと進化していくことができます。
苦労を乗り越えるモチベーション
若い時は苦労しなくてはいけない。これは避けられない真実です。しかし、その苦労を乗り越えるためには、明確なモチベーションが必要です。
私が皆さんに伝えたいのは、「苦労の先の楽しみをみようとするために苦労を苦労と思えないくらい先の楽しみを描くようにしている」ということです。
10年後の具体的な「稼ぎ」や「立ち位置」を通過点としてイメージすることは、その「楽しみ」を具体的に描くことと同義です。楽しみが見えない状況では、人は進めていない。
例えば、「10年後にこの稼ぎを実現すれば、大好きな旅行を自由にできる」「家族に豊かな生活を提供できる」「自分が本当にやりたいプロジェクトに投資できる」といった具体的な楽しみを描くことで、現在の厳しい自己投資や業務の苦労を、乗り越えるべき必然的なプロセスだと捉えることができるようになります。
私自身、学生時代から社会人初期にかけて、かなりの苦労をしました。しかし、30歳で独立するという明確な目標と、そこで得られる自由や達成感を常にイメージしていたからこそ、その苦労を楽しみながら乗り越えることができたのです。
第三章:無理に決めず、「可能性」にチャレンジする戦略
まだ決まっていなくても大丈夫
10年先をイメージする上で、具体的な「やること」が今決まっていればそれでいいです。しかし、もし決まっていなければ、無理に決めずに「いろいろチャレンジすること」を私は勧めます。
なぜなら、皆さんの可能性は無限大になるようにしておくべきだからです。
私自身、学生時代は「数多く経験することが将来の仕事に役立つかと本気で思っていたので、可能な限り行動してみました」。社会人になってからも、仕事を通じて「どんどん身に着けていろいろなことも実践してきたので、武器としては多く持てるようになりました」。
若いうちにいろいろチャレンジすることは、将来、多角的な解決策を生み出すための「武器」を増やす行為です。もし今、具体的な職種を決められなくても、10年後の「立ち位置」と「稼ぎ」という通過点だけは握りしめ、そこに向かって役立ちそうなことを何でも経験してみることです。
現代は変化が激しいため、私が若い時と現在は違いますし、人によっても違います。だからこそ、早い段階で一つの道に絞るよりも、多様な経験を積むことで、予期せぬ変化にも対応できる柔軟性を身につけることが重要です。
自分で枠をつくらない
私のこだわりは「こだわりを持たないこと」です。すなわち、「自分で枠をつくらない」ということです。
10年後、あなたがもし「この仕事は自分にはできない」と枠を作ってしまっていたとしたら、それは「進化」を止めていることになります。
私は、還暦が近づいた今でも、「やめるのではなく、あらゆる可能性にチャレンジしたい」と思っています。「こういうことが出来たらいいなと妄想してその中で実行できるものにチャレンジしていきたい」。この姿勢は、若い皆さんにも共通して言えることです。
10年先のイメージを固定しすぎるのではなく、その目標達成に必要な「武器」を増やすためなら、常に新しいことに挑戦し続ける柔軟さを持つべきです。
私が最初の会社を1年で辞めたのも、転職先で「30歳で独立したいのでいろいろと勉強したい」と正直に伝えたのも、すべて自分で枠を作らず、可能性を最大限に広げるためでした。この姿勢があったからこそ、必要な経験を最短で積むことができたのです。
妄想と実行のバランス
ただし、妄想だけでは意味がありません。私の特技は「自分で決めたことは即実行」です。
妄想することは大切です。それは、現実に縛られない自由な発想を可能にします。しかし、その妄想を妄想で終わらせず、実行できるものにチャレンジしていく。この「妄想」と「実行」のサイクルを回すことが、人生を豊かにし、進化を促進します。
10年後の「立ち位置」と「稼ぎ」をイメージし、そこに到達するために今何をすべきか考え、即座に実行する。この繰り返しが、最短での目標達成を可能にするのです。
結論:10年計画の連続が「熟成」した人生を作る
50年後の未来は確かに重要ですが、それは10年計画を5回繰り返すことで必然的に到達する結果です。
私自身の人生設計のように、30歳で独立という目標を最短で達成し、40歳、50歳と進化を続けることで、人生は「年をとることは老いることではなく、熟成されていくこと」へと変わっていきます。
この「熟成」は、心と体のケアを必須とし、生涯楽しめることを見つけて時間を忘れてでもやり続けることから生まれます。
現在、私は還暦を前にして、「より高いものを求めるより、より多くの人とのかかわりを求めたい」という意識の変化を感じています。これも、10年ごとに目標を見直し、進化を続けてきた結果です。
私は今、「一人(一企業)ではできないと諦めていたことを実現しようと思っています」。そのために、同業・異業種の企業や個人、そして自治体を含めて協働していきたいと考えています。このような大きなビジョンも、最初の10年、次の10年と、着実に進化を重ねてきたからこそ描けるものです。
皆さんも、まずは最初の10年先の「立ち位置」と「稼ぎ」を通過点として明確にイメージしてください。その通過点を目指して全力で走る中で、必然的に必要な出逢いや経験が皆さんの前に現れるはずです。
「すべての出逢いは偶然ではなく必然」。これは私の座右の銘ですが、これは明確な目標を持っているからこそ言えることです。10年後の自分の姿を明確にイメージし、そこに向かって行動することで、必要な出逢いを引き寄せることができます。
その必然性を最大限に活かし、次の10年、次の進化へと繋げていってほしいと願っています。
遠すぎる未来に惑わされず、まずは目の前の10年に全力で取り組む。そして、7、8年経ったら次の10年をイメージする。この繰り返しが、豊かで充実した人生を創るのです。
50年後を夢見る前に、まず10年先の自分の「立ち位置」と「稼ぎ」を具体的にイメージしてください。それが、皆さんのキャリアと人生を拓く第一歩となるはずです。
●プロフィール
川辺 勝也(株式会社ファーバルデザイン 代表取締役)
「すべての出逢いは偶然ではなく必然」
──この言葉を人生の羅針盤とし、建築というフィールドを通じて“人と空間の幸福な関係”を追求し続ける建築哲学者。
滋賀県出身、1966年生まれ。
■ 哲学と軌跡
幼少期から「この世に自分の名を刻む生き方をしたい」と願い、学生時代には「30歳で独立」という明確なビジョンを掲げた。
その目標を最短で実現するために、人生を10年ごとに区切り、常に“時間を味方につける生き方”を貫く。
バブル期にハウスメーカーへ入社後、わずか1年で転職を決断。
それは迷いではなく、「独立」という通過点に向けて、必要な経験を貪欲に積み上げるための戦略的な選択だった。
「感謝されること」と「金銭で評価されること」──
川辺氏がプロフェッショナルとして掲げるこの二軸は、建築という仕事を“感動産業”へと昇華させる指針でもある。
依頼されたことをただこなすのではなく、“+αの付加価値”で心を動かすことこそが真の仕事の喜びであり、信念の源だ。
■ 現在の活動と人生観
還暦を目前にした今もなお、川辺氏は挑戦の歩みを止めない。
「年を重ねることは老いることではなく、熟成すること」
──この信条のもと、健康維持を人生の礎とし、心と体を磨く日々を過ごす。
休日は五感を刺激する旅を好み、自然や文化に触れながら「自分という器を磨く時間」を大切にしている。
こうした日常の積み重ねが、空間づくりにおける“感性の厚み”を育んでいる。
■ 未来への展望
個の成功から、共創の時代へ。
川辺氏の関心は「一人で成し遂げること」から、「仲間と共に未来を創ること」へとシフトしている。
企業理念である
「未来へ向かった軌跡に感動の道を提供します。」
──この言葉に込められた想いを体現すべく、同業・異業種・自治体と手を取り合い、“感動のあるまちづくり”に挑む。
最終的なビジョンは、「人々が幸せと健康を感じながら過ごせる空間を創造すること」。
それは建築を超えた“ライフデザイン”の領域であり、川辺氏が人生をかけて描く軌跡の集大成である。
↓
